駅のホームや商店の軒先で、ツバメが子育てをする姿を見かけます。人が行き交う場所は落ち着かなそうですが、ツバメにとっては天敵を避けやすい場所になる可能性があります。カラスなどが人を警戒すれば、卵やヒナに近づく機会が減るためです。ただし、「人通りさえ多ければ安全」とまではいえません。巣の場所を調べた研究と、日本での観察から、その理由を見てみましょう。
人の近くが、天敵を避ける助けになる
ツバメは泥や草を使い、建物の壁などにおわん型の巣を作ります。日本の調査でも、一戸建ての住宅や商店への営巣が多く記録されています。巣を支える構造に加え、人が日常的に出入りすることにも意味があると考えられています。[1]
その説明の一つが、人の存在によって捕食者が近づきにくくなるという仮説です。人の近くで繁殖する利益があれば、ツバメが人の往来をある程度受け入れることも理解できます。ただし、これはツバメが頭の中で「人に守ってもらおう」と計画していることを示すものではありません。[2]
人の往来と巣の数を調べた研究
2023年に公表された韓国の研究では、2020~2021年に3島の14集落で149巣を調べました。141巣は人が住む建物にあり、空き家では8巣でした。調査地には居住建物684棟、空き家169棟があり、建物数の違いを考慮しても居住建物で営巣する割合が高い結果でした。[2]
カメラで測った人の移動頻度と巣の数にも正の関係がありました。ここで直接示されたのは、人の活動と営巣場所の関連です。人通りを実験的に増減させたり、カラスの襲撃回数を比較したりした研究ではないため、「人がカラスを遠ざけたことが原因」とまでは確定できません。日本のすべての駅や商店街に、同じ効果があると決めつけるのも早計です。[2]
ツバメは誰にでも同じように慣れる?
人への反応にも違いがあります。2025年公表の中国・広東省の研究では、120巣を対象に、住人と見知らぬ実験者が近づいたときに親鳥が飛び去る距離を調べました。住人に対しては、実験者より近づくまで逃げない傾向が確認されました。人を見分けている可能性を支持する結果です。[3]
ただし、調査は1地域・1繁殖期に限られ、指標は主に逃げ始める距離です。人の顔だけを手がかりにしているのか、どのように学ぶのかまで解明したわけではありません。「人の近くに巣があるから、誰が近寄っても平気」という理解は避けたいところです。[3]
にぎやかな街ほど子育てに向くとは限らない
日本野鳥の会の2013~2015年の調査では、巣立ちまで観察できた2,427巣の、その年1回目の繁殖を分析しています。1巣あたりの巣立ちヒナ数は、都市部で平均約3.9羽、郊外・農村部で約4.3羽でした。人が多い都市が、必ずしもよい繁殖環境とはいえない結果です。[4]
東京23区の分析では、周辺の水辺や緑地と巣立ちヒナ数に正の関連がありました。空中の昆虫を捕らえるツバメには餌場が必要で、泥や草を集める場所も欠かせません。また、建物に作った巣でもカラスに襲われる例があります。人の往来だけでなく、周囲の環境や巣の位置も合わせて見る必要があります。[4][5]
ツバメの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | スズメ目ツバメ科/学名 Hirundo rustica |
| 大きさ | 全長約17cm、翼を広げると約32cm |
| 餌 | ユスリカ、アブ、トンボなどの飛ぶ昆虫 |
| 巣 | 泥や草を使ったおわん型。人家や商店、駅などに作る |
| 季節の暮らし | 日本には主に夏鳥として渡来。春~夏に繁殖し、秋に東南アジア方面へ渡る |
基本情報の出典:日本野鳥の会「ツバメってどんな鳥?」ほか。
まとめ
ツバメの巣作りには、人の存在が天敵を避ける助けになるという説明があり、人の活動と営巣の関連も観察されています。一方で、保護効果の仕組みには検証の余地があり、餌場などの条件も重要です。身近な巣を見つけたら、観察のために近づきすぎず、親鳥の出入りを妨げないよう見守りましょう。
参考資料
- 環境省生物多様性センター「ツバメ類はどんな場所にどんな巣を作るの?」
- Kim, M., Chung, O.-S. & Lee, J. K.(2023)The relationship between nest location selection of Barn swallows (Hirundo rustica) and human activity and residence. Scientific Reports, 13, 23008.
- Liu, Y., Liu, Y. & Liang, W.(2025)Breeding barn swallows recognize householders from strangers. Animal Cognition, 28, 33.
- 日本野鳥の会「ツバメの子育て状況調査2013~2015 結果報告」(2016年5月)
- 日本野鳥の会「ツバメをまもろう」
- 日本野鳥の会「ツバメってどんな鳥?」

