グリーンイグアナの頭のてっぺんには、「頭頂眼(とうちょうがん)」という小さな光受容器官があります。左右の目のように景色を見るための目ではありませんが、光の量だけでなく波長にも反応します。研究から見えてくるのは、光を受け取る仕組みと体内時計の関係です。動画の「第三の目」を入り口に、その働きと、日本で起きている外来種問題を見ていきましょう。
頭頂眼は、どんな「目」なのか
頭頂眼は水晶体や網膜、光を受け取る視細胞を備え、神経で脳につながっています。ただし、物の形を見分ける画像形成の視覚とは役割が異なります。グリーンイグアナとグリーンアノールの網膜を調べた研究では、頭頂眼の視細胞に、左右の目の錐体に似た構造が確認されています。小さくても、単なる鱗ではないのです。[1]
明暗だけ?波長を変えて調べた研究
1969年のグリーンイグアナの研究では、頭頂眼の電気的な光応答に二つの成分があり、それぞれ約460ナノメートルと520ナノメートルで感度が最大になりました。これはおおむね青と緑に相当する波長です。「明るいか暗いかだけを感じる」と説明すると、こうした波長への反応を取りこぼします。[2]
さらに2012年の研究は、頭頂眼に紫外線を受け取るパラピノプシンと、緑の光を受け取るパリエトプシンという色素があることを示しました。ただし、波長を区別する仕組みがあることと、人間のように色のついた景色が見えることは別です。この研究が直接調べたのは色素の性質や細胞内の分布であり、イグアナの見え方そのものではありません。[3]
体内時計とメラトニンの関係
頭頂眼は松果体とともに研究されますが、両者は別の器官です。グリーンイグアナの頭頂眼、松果体、左右の目の網膜をそれぞれ培養した実験では、メラトニン産生に日周リズムがあり、暗い時間帯に高くなりました。したがって、「光を感じるとメラトニンを出す」とだけ説明するのは正確ではありません。光と暗闇の周期が、内在する時計のリズムを合わせる手がかりになります。[4]
また、グリーンイグアナの実験では、頭頂眼の除去による選択体温の変化は一時的で、血中メラトニンの日周変動は保たれました。一方、松果体の除去では選択体温の昼夜差や血中メラトニンに大きな変化が生じました。体温調節を「第三の目」だけで説明することはできません。[5]
ほかのトカゲとの比較と進化の手がかり
頭頂眼の光受容色素は、トカゲの仲間でも同じとは限りません。2012年の研究は、イグアナの紫外線・緑感受性色素の組み合わせを、別種のトカゲで知られる青・緑の組み合わせと比較しています。魚類などの松果体関連器官との共通点もあり、進化の過程で光を受け取る器官の役割が分化した可能性が論じられています。[3]
行動への影響も一様ではありません。カベカナヘビ(Podarcis muralis)の頭頂眼を覆った実験では、体温調節を始める温度が一時的に変化した一方、日光浴の継続時間には変化がありませんでした。「ふさぐと必ず日光浴が長引く」とは言えず、別種の結果をグリーンイグアナにそのまま当てはめないことが大切です。[6]
グリーンイグアナの基本情報
| 学名・分類 | Iguana iguana/爬虫綱・有鱗目・イグアナ科・イグアナ属 |
|---|---|
| 自然分布・環境 | メキシコから中南米、西インド諸島。水辺の森林など |
| 大きさ | 尾を含む全長は最大約2メートル(京都市動物園)。平均値ではありません |
| 食性・行動 | 成体は主に植物食。幼体は昆虫を食べることもあります。昼行性・樹上性で、泳ぎも得意です |
| 保全状況 | IUCN評価はLC(低懸念)。移入先での生態系への影響とは別の評価です |
石垣島では外来種としての課題も
石垣島では1994年ごろから野生化個体が目撃され、ペットの逸出や放逐が侵入経路と考えられています。環境省は重点対策外来種に選定し、2016~2017年には島北部で発信器を使った追跡調査を行いました。居場所をGPSで記録し、行動範囲や好む環境を調べる取り組みです。[9][10]
国立環境研究所は、在来小動物の捕食や植物・果実などの食害を影響として挙げています。ただし、この情報だけで石垣島の被害量を断定することはできません。生き物としての魅力を知ることと、飼育個体を野外に放さず脱走を防ぐことは、どちらも大切です。[8]
まとめ
頭頂眼は、光の環境を受け取る小さな器官です。波長への応答や体内時計との関係には実験的な裏付けがありますが、役割や影響の強さは器官や種によって異なります。「第三の目」という呼び名から一歩進み、何が確かめられたのかを見ると、イグアナの暮らしがより立体的に見えてきます。
参考資料
- The fine structure of the parietal retinas of Anolis carolinensis and Iguana iguana(1979)
- Hamasaki(1969):グリーンイグアナ頭頂眼の分光感度
- Wadaほか(2012):頭頂眼の紫外線感受性色素
- Tosini・Menaker(1998):グリーンイグアナの複数の概日時計
- Tosini・Menaker(1996):松果体複合体・メラトニンと体温調節
- Tosini・Avery(1994):カベカナヘビ頭頂眼の遮光実験
- 京都市動物園:グリーンイグアナ
- 国立環境研究所:侵入生物データベース
- 環境省:グリーンイグアナのテレメトリー調査(2016)
- 環境省:テレメトリー調査を終えて(2017)
- International Iguana Foundation:Common Green Iguana(IUCN評価の紹介)
動画で見るグリーンイグアナ
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