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アホウドリが何年も海で暮らせる理由――翼のロック機構と飛行中の睡眠の謎

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鳥類
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アホウドリの若鳥は、巣立ち後の数年間を主に海で過ごします。その暮らしを支えるのが、翼を広げる負担を減らす体の構造と、風を利用する飛び方です。ただし、「陸に戻らない」ことと「何年も飛び続ける」ことは別。動画で紹介した翼の仕組みを、研究で分かっている範囲と合わせて見ていきましょう。

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翼を支える「肩のロック機構」

大きな翼を広げたまま保つには、翼を支える仕組みが必要です。アホウドリ類では、胸筋の深い層に沿って伸びるシート状の腱が、滑空時の翼を水平に保つ支えになります。これが「shoulder lock」と呼ばれる構造です。

Ron A. MeyersとEric F. Stakebakeが2005年に『Journal of Morphology』で発表した研究は、解剖と免疫組織化学によってこの構造を調べました。対象はコアホウドリとクロアシアホウドリで、この記事のアホウドリ(Phoebastria albatrus)そのものではありません。アホウドリ類の飛行を理解する手がかりですが、対象種の違いには注意が必要です。[1]

研究では、姿勢の維持に適した、疲れにくい筋線維も確認されました。腱による受動的な支えと筋肉の働きを組み合わせるという説明であり、「ロックすれば筋肉もエネルギーも一切使わない」という意味ではありません。

翼を支えるだけでなく、風から力を得る

翼のロック機構だけでは、飛行中に失うエネルギーを補えません。アホウドリ類が利用する「ダイナミック・ソアリング」は、海面付近と上空で風の速さが違うことを利用する飛び方です。高さや向きを変えながら風からエネルギーを得るため、羽ばたきを減らせます。

ワタリアホウドリ16羽を追跡した研究では、精密なGPS記録から、この飛行の軌跡と風からエネルギーを得る過程が調べられました。これも別種の研究ですが、翼を支える構造と風を利用する動きが、それぞれ違う役割を担うことが分かります。[2]

飛びながら眠ることは証明されている?

2016年、Niels C. Rattenborgらは『Nature Communications』で、飛行中の睡眠を脳波(EEG)で直接確認しました。対象はオオグンカンドリ(Fregata minor)です。脳の片側だけが眠る半球睡眠に加え、両側が同時に眠る状態も記録されました。[3]

アホウドリも同様の仕組みを持つ可能性は考えられますが、今回確認した資料では、アホウドリ自身の飛行中の睡眠をEEGで直接実証した研究は見当たりませんでした。長く飛べることや目を閉じる様子だけでは、睡眠の証明にはなりません。研究者の総説でも、アホウドリ類が夜間に水上で眠る可能性が論じられています。[4]

「5歳まで陸に降りない」は一律ではない

海で暮らす期間には、飛行だけでなく水面に浮かんで過ごす時間も含まれます。また、山階鳥類研究所は聟島で4歳の雄の帰還・定着を報告しています。「全個体が5歳まで一度も上陸しない」とは言い切れません。島へ戻る年齢と、繁殖を始める年齢も区別して考える必要があります。[5]

アホウドリの基本情報

この記事で扱う種:アホウドリ
学名・英名 Phoebastria albatrus/short-tailed albatross
分類 ミズナギドリ目・アホウドリ科・キタアホウドリ属
翼を広げた長さ 213〜229cm
繁殖地 伊豆鳥島、尖閣諸島、小笠原諸島聟島、米国ミッドウェイ環礁
非繁殖期の分布 北太平洋・ベーリング海(北緯20〜60度)
食べ物 イカ類、トビウオ類、甲殻類など。雛には未消化の餌や脂肪分の多い胃油を口移しで与える
保全状況 IUCNレッドリスト:危急種(VU)

翼の大きさ・食性は米国魚類野生生物局の種解説も参照。[6]

海の暮らしを守るには、繁殖する島も必要

羽毛採取のための乱獲などで激減し、1949年には絶滅した可能性が報告されました。しかし1951年、鳥島で生存が再確認されます。その後、観測所職員や研究者らによる保護が続きました。[7]

鳥島では、より安全な場所に営巣を促すため、実物大の模型「デコイ」と鳴き声を利用。仲間が集まる場所に引き寄せられる習性を生かした取り組みです。山階鳥類研究所は2025年時点で9,500羽以上への回復を伝えていますが、繁殖地の保全や混獲への対策は続いています。[8]

まとめ

長い海上生活は、省力的な飛行と海での採食・休息に支えられています。翼の構造、風の使い方、睡眠はそれぞれ別の問題。研究対象の種と証拠の範囲を分けると、アホウドリの姿がより正確に見えてきます。

参考資料

  1. Meyers & Stakebake(2005)翼の姿勢と肩のロック機構の解剖学的研究
  2. Sachsほか(2013)Experimental verification of dynamic soaring in albatrosses
  3. Rattenborgほか(2016)Evidence that birds sleep in mid-flight
  4. Rattenborg(2017)Sleeping on the wing
  5. 山階鳥類研究所:聟島育ちのアホウドリ3羽が帰還しています
  6. 米国魚類野生生物局:Short-tailed Albatross
  7. 山階鳥類研究所:鳥島とアホウドリの歴史
  8. 山階鳥類研究所:あなたの寄附でアホウドリを復活へ。

動画で見る

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