カエルが獲物を口に入れたあと、目をぎゅっと引っ込めることがあります。これは、飲み込みを助ける動きです。柔らかい舌で捕らえ、口の中へ運び、眼球の動きも使って飲み込む。その役割分担を、実験から見ていきましょう。ここではカエル全般を扱い、特定の種で得られた結果は研究例として紹介します。
柔らかい舌と、粘り方が変わる唾液
ジョージア工科大学の研究チームは、捕食の高速撮影に加え、舌の柔らかさと唾液の性質を測定しました。調べた舌は脳組織に匹敵するほど柔らかく、獲物の形に沿って変形します。唾液には、ずらす力が加わると流れやすくなる性質があります。
舌が虫に当たると唾液が表面の凹凸に入り込み、引き戻す段階では粘りが獲物を保持します。柔らかい舌も衝撃を和らげます。つまり、単に「強力な接着剤で離さない」のではなく、捕まえてから口内で離すまでに適した性質なのです。[1]
目玉はどうやって飲み込みを助ける?
眼球を引き込むのは、眼球牽引筋(retractor bulbi)です。カエルの眼窩の底は骨で完全に閉じられておらず、筋肉が収縮すると、眼球と周囲の組織が口とのどの空間へ下がれます。「目と食道の間に仕切りがない」というより、口の天井側から押す構造と考えると理解しやすいでしょう。[2]
2004年の研究は、キタヒョウガエル(論文名ではRana pipiens)にコオロギを与えて調べました。X線動画では眼球周辺が口内へ下がり、獲物に接触するように見えました。筋電図では眼球牽引筋の活動を確認。さらに、両側の筋肉へ行く神経を切断した群を、無処置の群や神経を切らずに手術した群と比較しました。
神経を切断しても嚥下はできましたが、コオロギ1匹に必要な嚥下回数は平均2.3回から4.0回へ、約74パーセント増えました。これは、舌を中心とする嚥下を眼球の動きが助ける「副次的な嚥下機構」であることを支持します。獲物を後方へ押すほか、舌で運ぶ間の固定にも役立つ可能性がありますが、後者は研究者の解釈です。[3]
すべてのカエルで同じとは限らない
この実験は特定の種と大きさの餌での結果です。2022年のオオヒキガエルのX線研究では、嚥下時に目が開いていることがほとんどで、舌骨の動きが餌を舌から外す過程に関わっていました。「目を閉じなければ飲み込めない」と、カエル全体へ広げることはできません。[2]
皮膚呼吸の割合は一定?
湿った皮膚も呼吸の場です。酸素は皮膚を通って血液へ拡散し、二酸化炭素は体外へ出ます。皮膚に発達した血管がこの交換を支えます。[4]
ただし「全呼吸量の30〜50パーセント」と一律には言えません。1986年のキタヒョウガエルの実験では、25度で空気を吸える水面に静止した個体の酸素取り込みのうち、皮膚経由は23パーセント。水をかき混ぜた条件では35パーセントでした。同じ種でも水の動きで変わり、酸素の取り込みと二酸化炭素の排出も区別する必要があります。[5]
変態では体の内側も作り替わる
典型的な生活史では、卵からオタマジャクシがかえり、後ろ足、前足の順に外へ現れます。尾は脱落するのではなく、吸収されていきます。オタマジャクシには藻類などを食べるものだけでなく、雑食や肉食のものもいます。卵の中で育ち、自由に泳ぐ幼生期を経ない種もあります。[6]
変態を制御する重要な信号が甲状腺ホルモンです。米国NICHDのアフリカツメガエル類の研究では、尾の吸収だけでなく、腸の細胞が死んだり、新しい細胞が増殖・分化したりして、成体に合う構造へ再編されることが説明されています。[7]
カエルの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 両生類・無尾目(Anura) |
| 世界の種数 | 8,038種。米国自然史博物館の分類データベース、2026年10月1日確認。分類の更新で変動する。[8] |
| 生息環境 | 熱帯雨林から砂漠まで幅広い。乾燥地にも、地中などで乾季をしのぐ仲間がいる。[9] |
まとめ
カエルの食事は、舌の柔らかさ、唾液、眼球や口内の動きが支えています。皮膚呼吸や変態も含め、身近な「カエル」という呼び名の中には多様な仕組みがあります。動画では、捕食後の目の動きにも注目してみてください。
参考資料
- Georgia Tech:舌と唾液の研究(2017)
- Keeffeほか:オオヒキガエルの捕食機構(2022)
- Levineほか:眼球の引き込みと嚥下(2004)
- Skin Breathing in Amphibians
- Pinder・Burggren:肺と皮膚の酸素取り込み(1986)
- Australian Museum:カエルの生活史
- NICHD:甲状腺ホルモンと変態
- AMNH:Amphibian Species of the World
- AMNH:世界のカエル研究

