ヒマワリは一日中、花を太陽へ向け続ける――よく知られたイメージですが、実際に東から西へ動くのは主に開花前の若い株です。若い茎は左右の成長速度を切り替えて昼に西へ、夜に東へ戻り、成熟すると東向きで止まります。この運動には体内の概日時計が関わり、朝に温まりやすい東向きの花は訪花昆虫や繁殖にも有利です。その仕組みは、光へ自律的に曲がる人工材料「SunBOT」の着想にもなりました。
茎の左右が交代で伸びる
2016年のScience論文によると、若いヒマワリは朝に東を向き、日中は茎の東側が西側より速く伸びることで先端が西へ傾きます。夜は反対側の成長が優勢になり、日の出前までに東へ戻ります。一定の照明下でもおよそ24時間の往復がしばらく続き、明暗周期を24時間以外にすると生育が低下した実験から、単なる光への反射ではなく概日時計と環境光の協調が示されました。
ただし、分子経路の全容が決着したわけではありません。2023年のPLOS Biology研究は、青色光受容体フォトトロピンだけで説明される通常の屈光性とは異なり、複数の光シグナルが関わる可能性を示しています。
成熟すると東向きで止まる理由
開花が近づくと茎の伸長は遅くなり、花序は東向きに固定されます。Atamianらが鉢を回して西向きにした花と比較すると、東向きの花は朝に早く温まり、訪花昆虫が約5倍多くなりました。西向きの花をヒーターで温めると訪花が増えたため、朝の温度が重要な要因だと考えられます。
2021年の研究では、東向きで小花の成熟や花粉放出が早まり、種子の大きさや父親として残す子の数にも差が出ました。さらに2023年公開の圃場研究では、自然に東を向いた頭状花序で充実種子の数と総重量が最大でした。ただし後者は各向き10個体ずつの比較で、天候や栽培条件の影響も受けます。「東向きなら必ず収量が増える」と一般化するには追加検証が必要です。
一輪に見えて、数百の花の集合
大きな「花」は、周囲の黄色い舌状花と中央の多数の筒状花が集まった頭状花序です。中央の小花は外側から内側へ順に成熟します。小花がつく時計回り・反時計回りのらせん数は55と89など、隣り合うフィボナッチ数になることが多い一方、すべての個体が必ずその数になるわけではありません。この密な配置が、一枚の大きな花のように昆虫へ目立つ構造をつくります。
ヒマワリをまねたSunBOT
UCLAのXiaoshi Qian、Ximin Heらは2019年、光を熱へ変える成分と、温度で収縮する高分子を組み合わせた細い柱状材料を発表しました。光が斜めから当たると照射側が縮んで光源へ曲がり、正対すると自己遮蔽によって温度差が小さくなり停止します。これがSunBOT(sunflower-like biomimetic omnidirectional tracker)です。
実験では75度の斜入射でも利用可能な光の約90%を捉え、斜め照射下の太陽蒸気生成装置では非追尾材料に対し最大400%の集光向上を示しました。これは市販の太陽光パネルで発電量が4倍になったという意味ではありません。別の解析では二軸追尾面の受光量が固定面より平均38.7%多いとされますが、場所・天候・駆動コストで効果は変わります。SunBOTはモーターなしの追尾材料という可能性を示した段階で、耐久性や大面積化、発電設備への実装は今後の課題です。
ヒマワリの基本情報
| 学名 | Helianthus annuus L. |
|---|---|
| 分類 | キク科ヒマワリ属の一年草 |
| 原産 | 北アメリカ(米国南西部〜メキシコ) |
| 花の構造 | 多数の小花からなる頭状花序 |
| 向日性 | 主に若い成長段階で見られ、成熟後は東向きに固定 |
まとめ
ヒマワリの向日性は、花が首を振る動作ではなく、若い茎の両側で交互に起こる成長です。概日時計は日の出を先取りし、成熟後の東向きは朝の加温を通じて受粉と繁殖を助けます。SunBOTはこの「刺激の方向を検知し、正対すると止まる」性質を材料で再現しましたが、生物の概日時計をそのまま複製したものではありません。植物の仕組みを正確に分けて見ることが、応用技術の現在地も理解しやすくします。
参考資料
- Atamian et al. (2016), “Circadian regulation of sunflower heliotropism, floral orientation, and pollinator visits,” Science
- Brooks et al. (2023), “Multiple light signaling pathways control solar tracking in sunflowers,” PLOS Biology
- Creux et al. (2021), “Flower orientation influences floral temperature, pollinator visits and plant fitness,” New Phytologist
- Takács et al., “East-facing Helianthus annuus has maximal number and mass of kernel-filled seeds”
- Qian et al. (2019), “Artificial phototropism for omnidirectional tracking and harvesting of light,” Nature Nanotechnology
- Kew Science, Plants of the World Online: Helianthus annuus
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