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イチョウの精子はどこを泳ぐ?花粉管と水がつなぐ受精の仕組み

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植物
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街路樹としておなじみのイチョウは、種子を作る植物でありながら、鞭毛を動かして泳ぐ精子を持っています。ただし、木から木へ精子が泳ぐわけではありません。風が運ぶのは花粉で、精子が泳ぐのは、将来種子になる「胚珠」の内部にある液体です。花粉による運搬と、最後の短い距離を泳ぐ仕組みが、一つの木の中で組み合わさっています。[1]

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受粉してすぐに受精するわけではない

イチョウは雄株と雌株が分かれる雌雄異株の植物です。雄株から飛んだ花粉が雌株の胚珠に届くのが「受粉」。精子と卵細胞が融合する「受精」は、その後に起こる別の出来事です。

2001年に発表された中尾義則らの研究では、受粉から受精まで約120日かかり、4月下旬〜5月上旬に受粉した後、9月上旬に精子が卵へ泳いで受精する経過が報告されました。これは調査されたイチョウでの結果で、すべての地域・個体に同じ日程を当てはめるものではありません。春に花粉が届いた時点では、受精の準備はまだ続いているのです。[2]

イチョウも花粉管を作り、その内部で精子が形成されます。受精の時期になると、精子は花粉管から胚珠内の液体へ放出され、鞭毛を使って卵細胞を収める器官へ向かいます。多くの被子植物のように、花粉管が泳がない精細胞を届ける方法とは、最後の受け渡し方が異なります。[3]

泳ぐ通路も、最初から空いているだけではありません。2007年の研究では、胚珠内にある珠心という組織の細胞が、制御された過程で死ぬことと、精子の通り道となる空間の形成との関連が示されました。精子の運動だけでなく、受け入れる側の組織の変化も調べられています。[4]

平瀬作五郎が見つけた、種子植物の意外な姿

1896年にイチョウの精子を発見した平瀬作五郎は、当時、東京大学の理学部植物学教室の助手でした。研究材料となったのは小石川植物園の大イチョウです。大学の記録によると、平瀬はまず鞭毛を備えた精子と考えられる構造を観察し、さらに秋には生きた材料で運動を確認して東京植物学会で発表しました。形の観察に加え、動くところを確かめた点が重要です。[5][6]

この発見は、種子を作る植物にも泳ぐ精子が存在することを示しました。現在の種子植物ではソテツ類にも見られ、植物の生殖がどのように変化してきたかを考える重要な手がかりになっています。[3]

「泳ぐ精子がある=水辺にしか生えない」ではない

コケやシダの多くは、精子が卵へ移動する際に雨水など外部の水を必要とします。一方、イチョウでは泳ぐための液体が胚珠の内部に用意されます。精子が泳ぐという共通点があっても、水の使い方まで同じではありません。[1]

また、「古い仕組みが残る」ことと「進化が止まっている」ことも別です。イチョウの仲間は約2億7000万年前にさかのぼる化石記録を持ち、ジュラ紀に繁栄しました。その後、白亜紀末から古第三紀にかけて多くが姿を消し、現存するのはイチョウ一種です。ただし、長い系統の歴史だけから、泳ぐ精子が残った理由や仲間が衰退した原因を一つに決めることはできません。

イチョウの基本情報

和名・学名 イチョウ/Ginkgo biloba
分類 イチョウ科の裸子植物
原産 中国
繁殖 雌雄異株・風媒。雌株に種子ができる
葉 扇形で、切れ込みの深さや数には違いがある
保全状況 IUCNレッドリストで絶滅危惧(EN)。広く栽培される一方、野生個体群は保全の対象

ギンナンは、植物学的には果実ではなく種子です。裸子植物なので、種子は子房に包まれていません。果肉のように見える外側の柔らかい部分も種皮の一部です。身近な栽培木の多さと、原産地の野生個体群が安泰であることも分けて考える必要があります。[7]

身近な木を、生殖の仕組みから見る

イチョウの特徴は、風に運ばれる花粉と、胚珠の内部を泳ぐ精子の両方を使うことです。秋のギンナンの内側では、春の受粉から続く発達が進んできました。葉や種子を見るとき、その見えない過程にも目を向けると、いつもの街路樹の見方が変わります。

参考資料

動画で見る

イチョウの精子は泳ぐ!身近な木に残る古い生殖の仕組み

イチョウをもっと知る・育てる

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