枝そっくりの姿で身を隠すナナフシモドキには、もう一つ目を引く能力があります。幼虫のうちに脚を失うと、その後の脱皮を利用して脚を再生できるのです。ただし、傷口からすぐに元どおりの脚が伸びるわけではありません。再生には時間と複数回の脱皮が必要で、成虫になれば同じ回復は期待できません。
再生は「脱皮のたびに作り直す」工程
昆虫の体表は硬い外骨格に覆われているため、体の外に新しい脚が連続的に伸び続けることはできません。失った脚の付け根では、まず傷口が閉じ、内側で再生組織が成長します。それが次の脱皮で小さな脚として現れ、さらに脱皮を重ねるにつれて大きさや形が整っていきます。
ナナフシの仲間を使った実験では、2齢幼虫に脚を自切させると、最初の脱皮後には通常の約4分の1、次には約2分の1、3回目にはほぼ通常サイズの脚になったと報告されています。ただし、この具体的な回復速度は別種のフタスジナナフシで得られた観察です。日本のナナフシモドキでも常に同じ回数・割合になるとまでは確認されていません。
脚を切り離す「自切」と再生は別の能力
ナナフシ類の一部は、捕食者につかまれたときや脱皮中に脚が引っ掛かったとき、決まった位置から脚を切り離す「自切」を行います。これは失血や傷を抑えながら、その場を逃れるための仕組みです。一方、再生は失った後に組織を作り直す過程です。つまり、自切は今すぐ生き残るための避難手段、再生はその後の機能を取り戻す手段と考えると分かりやすいでしょう。
脚を失った時期も重要です。若い幼虫ほど成虫になるまでに残された脱皮回数が多いため、脚を整える機会も多くなります。反対に、羽化後の成虫は通常それ以上脱皮しないので、失った脚を外見上再生する機会がありません。幼虫なら必ず完全に戻るという意味でもなく、切断位置、傷の状態、栄養、温度や湿度などが結果に関わる可能性があります。
再生は無料ではない
新しい脚を作るには物質とエネルギーが必要です。翅を持つナナフシの一種では、脚を再生した個体は成虫の翅が相対的に小さくなり、飛行能力も低下しました。一方、別のナナフシで触角、目、防御腺、生殖器などを調べた実験では、明確な成長上の代償が多くの項目で見つかりませんでした。再生のコストがどこに表れるかは、種や生活史、餌などの条件によって異なると考えられます。
クイズ:失った脚は一度の脱皮で元どおりになる?
答えは「通常は一度で完全には戻らない」です。幼虫期に脚を失った場合、再生脚は脱皮に合わせて外に現れ、複数回の脱皮で段階的に大きくなります。成虫になるまでの脱皮回数が足りなければ、脚が小さいままになることもあります。
基本情報
| 分類 | 昆虫綱・ナナフシ目 |
|---|---|
| 再生しやすい時期 | 脱皮を残している幼虫期 |
| 再生の進み方 | 脱皮のたびに再生脚が段階的に成長 |
| 成虫の再生 | 通常は脱皮しないため、外見上の脚の再生は期待できない |
| 注意点 | 能力や必要な脱皮回数には種差・個体差がある |
まとめ
ナナフシモドキの再生力の鍵は、幼虫期に繰り返す脱皮です。脚を失うと体内で再生の準備が進み、次の脱皮で小さな脚が現れ、その後も少しずつ整います。ただし、ナナフシ目全体で得られた知見をナナフシモドキ一種へそのまま当てはめることはできません。再生の速さや完全さ、成長への代償には、まだ種ごとに確かめる余地があります。「何でも元どおりにする力」ではなく、成長の仕組みを利用した、条件つきの回復能力なのです。


