
人の暮らしのすぐそばにいるスズメは、建物のすき間などに巣を構え、卵を温め、ふ化したヒナへ何度も餌を運びます。環境省の資料では、産卵数は4~7個、抱卵は12日前後、ふ化から巣立ちまでは14日前後が目安です。つまり産卵後、順調なら約1か月で巣立ちを迎えます。ただし、時期や地域、天候などによって経過は変わります。
巣作りから巣立ちまでの流れ
1.穴やすき間に巣を作る
スズメは、木の枝に皿形の巣をむき出しで作る鳥とは違い、穴やすき間を使う「樹洞性」の鳥です。日本の市街地や農耕地では、屋根の軒下、建物の穴、電柱の設備などの人工物もよく利用します。外側には枯れ草などを組み、内側には羽毛などの柔らかい材料を入れます。巣材の種類は周囲で手に入るものによって変わるため、すべての巣が同じ構造になるわけではありません。
2.抱卵し、ふ化したヒナへ餌を運ぶ
環境省の第6回自然環境保全基礎調査によると、日本ではおもに4~8月に繁殖し、4~7卵を12日前後抱卵します。ヒナはふ化直後から自力で飛べるわけではなく、巣内で親の給餌を受けて育ちます。成鳥は繁殖期以外には植物の種子や果実も多く食べますが、ヒナにはおもに昆虫の幼虫を与えます。成長期に必要な栄養を、親鳥が周囲の緑地や農地などから集めて運ぶのです。
3.約2週間で巣立つが、すぐ独立するわけではない
ヒナはふ化から14日前後で巣立つとされています。巣立ちビナは成鳥より全体に淡い色で、頬の黒斑が薄く、くちばしの縁が黄色っぽいのが特徴です。地面や低い枝にいると弱っているように見えることがありますが、巣立ち後もしばらく親から餌をもらうのは通常の成長過程です。けがなど明らかな異常がなく、危険が迫っていない場合は、すぐに連れ去らず離れて見守ることが大切です。
都市と農村で巣の使い方は同じではない
立教大学などの研究グループは、石川県の都市部と農村部でスズメの巣を比較しました。調査地では、都市部で電柱の変圧器ボックス、農村部で家屋の軒下が最も多く利用されました。さらに、都市部では繁殖のピークが3回、農村部では2回確認され、巣の再利用も都市部のほうが多いという結果でした。
これは「都市のスズメは必ず年3回繁殖する」という意味ではありません。特定地域で得られた観察結果であり、利用できる穴の種類や分布が繁殖行動に関係しうることを示しています。函館市の24調査区を調べた別の研究でも、住宅地の巣密度を説明するモデルには、隣接する都市公園の有無と住宅の換気口数が含まれました。巣穴だけでなく、餌を探せる緑地との組み合わせも重要だと考えられます。
よくある誤解:巣立ちビナは「捨てられたヒナ」?
巣立ち直後のヒナは飛び方が不安定で、親と離れているように見えることがあります。しかし、親鳥は人が近くにいる間は姿を見せず、離れた場所から警戒している場合があります。巣立ちは独り立ちの完了ではありません。また、繁殖中の巣をのぞいたり動かしたりすると、親鳥を警戒させるおそれがあります。観察は距離を取り、巣穴をふさがないようにしましょう。
スズメの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Passer montanus |
| 全長 | 約15cm |
| 日本での分布 | 小笠原諸島を除く全国で繁殖 |
| 主な環境 | 市街地、農耕地など人家の周辺 |
| 繁殖期の目安 | 4~8月 |
| 卵数・成長 | 4~7卵、抱卵約12日、ふ化後約14日で巣立ち |
| 食性 | 種子、果実、昆虫、クモ類など。ヒナにはおもに昆虫の幼虫 |
まとめ
スズメの子育ては、身近な建物の穴やすき間を選ぶところから始まります。抱卵約12日、ふ化後約14日という短い期間に、親鳥はヒナへ繰り返し昆虫を運びます。都市と農村では利用する人工構造や巣の再利用に違いが観察されており、人の建物と餌場になる緑地の両方が、身近な鳥の繁殖を支えています。

