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コウテイペンギンの卵はなぜオスの足の上?南極の冬を越す繁殖生態

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コウテイペンギン

コウテイペンギンは、南極の冬に海氷上で繁殖する唯一のペンギンです。メスが産む卵は1個。卵を受け取ったオスは、地面に置かず、足の甲に載せて腹部の皮膚(抱卵斑)で覆います。これは「足で卵を温める」というより、卵を氷から離し、親の体温が伝わる場所に保つ仕組みです。

ただし、オスだけですべての子育てをするわけではありません。オスが抱卵している間にメスは海で採餌し、孵化のころに戻ると、親は交代しながらヒナを守り、胃から吐き戻した餌を与えます。繁殖成功には、オスとメスの役割分担、集団での保温、そして春まで安定した海氷がそろう必要があります。

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卵を産んでから孵化するまで

繁殖地に集まった個体はつがいをつくり、メスは南極の秋から初冬に卵を1個産みます。巣材で作った巣はありません。卵はメスの足元からオスの足へ慎重に渡され、オスの抱卵斑の下に収まります。卵が氷上に長く触れれば急速に冷えるため、この受け渡しは繁殖の重要な場面です。

その後、メスは失った栄養を補うため海へ向かい、オスは約65日間抱卵します。オスは繁殖地へ来てから抱卵を終えるまで長期間ほぼ絶食し、蓄えた脂肪を使います。孵化後にメスの帰還が遅れた場合、オスが食道から栄養性の分泌物を出し、短期間ヒナに与えることがあります。しかし通常の餌は、海で魚やオキアミ、イカ類などを捕った親が胃から吐き戻すものです。

集団は「ずっと同じ輪」ではない

抱卵中のオスは密集群(ハドル)をつくり、風にさらされる面積を減らしてエネルギーを節約します。2001年にフランスのデュモン・デュルヴィル基地近くで8羽を計測した研究では、密集していた時間は繁殖期全体の平均38%でした。1回の密集は平均約1.6時間で、個体が入れ替わる動的な集団だったと報告されています。外気の平均がマイナス17℃の状況でも、鳥の周囲が0℃を超える時間が生まれ、密集内部では20℃を超える場合もありました。

この研究が直接示したのは、装置を付けた少数個体の周囲温度と行動です。すべての繁殖地で割合や温度が同じとは限りませんが、ハドルが絶食中のエネルギー消費を抑える重要な行動だという説明を支えています。

よくある誤解:育てるのはオスだけ?

オスが担当するのは主に卵の抱卵です。メスはその間に海で餌を確保し、戻った後はヒナへの給餌を引き継ぎます。その後は両親が交代で採餌と保護を行います。また「ペンギンミルクを母親がいつも与える」という説明も正確ではありません。食道の分泌物を使うことがあるのは孵化時に残っているオスで、あくまでメスの帰還までをつなぐ例外的な食物です。

海氷は足場であり、繁殖カレンダーの一部

コウテイペンギンは、沿岸に固定された定着氷を繁殖場所として利用します。ヒナが防水性のある羽毛を備える前に氷が崩れると、海へ落ちて低体温や溺死に至るおそれがあります。衛星画像を用いた2023年の研究は、2022年にベリングスハウゼン海で調べた5繁殖地のうち4か所で、巣立ちまで生き残ったヒナがいないと推定しました。これは特定地域・特定年の観測結果であり、南極全体で毎年同じことが起きたという意味ではありません。

IUCNは2026年4月、コウテイペンギンを「準絶滅危惧」から「危機(Endangered)」へ変更しました。根拠には、海氷変化を考慮したモデルで2080年代までに個体数が半減すると予測されたことなどがあります。将来予測には幅がありますが、早すぎる海氷崩壊が現実に繁殖失敗を招くことは観測されています。

コウテイペンギンの基本情報

学名 Aptenodytes forsteri
分布 南極大陸の沿岸域
繁殖場所 主に沿岸の定着氷上
産卵数 通常1個
抱卵 オスが足の上で約65日間
主な餌 魚類、オキアミ、イカ類など
IUCN評価 危機(Endangered、2026年評価)

まとめ

コウテイペンギンの卵がオスの足の上にあるのは、巣のない海氷上で卵を冷却から守るためです。長い絶食をハドルでしのぐオス、海で餌を蓄えて戻るメス、孵化から巣立ちまで残る海氷。そのどれか一つではなく、冬から春へ続く一連の条件によって繁殖が成り立っています。

参考資料

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