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バオバブの太い幹は何をしている?水利用・落葉・長寿の仕組み

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太い幹が特徴的な、雄大なバオバブの木のイラスト 植物
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バオバブの太い幹は多量の水を含む柔らかな組織をもち、季節的に乾燥する環境で葉や組織の水分状態を支えます。しかし「幹が巨大な水筒で、乾季には中の水を自由に飲む」という像は単純化しすぎです。貯蔵水がいつ、どの器官へ、どれほど使われるかは季節と種によって異なり、研究では乾季前の展葉に使われる一方、雨季の日中の蒸散を常に補うわけではないことも示されています。

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乾季と雨季を乗り切る流れ

  1. 雨季:根から吸収した水で葉を展開し、光合成と成長を進めます。幹の含水組織も水分を得て、幹の周囲長は季節や一日の中で変化します。
  2. 乾季への移行:落葉して葉からの水分損失を大きく減らします。葉がない姿が「根を上にした木」と形容される理由です。
  3. 貯蔵水の利用:幹や枝の水は細胞の張りや水輸送の安全性を保ち、種によっては雨が本格化する前の展葉を支えます。
  4. 繁殖と散布:花粉媒介者は種・地域によりコウモリ、キツネザル、昆虫などが関わります。硬い殻の果実は動物や人に利用され、種子散布にもつながります。

樹液流を測った研究

Saharah Moon Chapotin、Juvet H. Razanameharizaka、N. Michele Holbrook(2006)は、マダガスカルのバオバブで幹の異なる位置に樹液流センサーを設置し、雨季の日中に貯蔵水が葉の水不足を埋めるという仮説を検討しました。幹の水分は重要ですが、日々の蒸散を大量の貯蔵水で継続的に補う証拠は得られず、主に組織の膨圧維持や水輸送の安全性に寄与すると解釈されました。

同じ研究グループは別の観察で、雨季前に新葉を出す際、幹基部の樹液流がほぼゼロで、幹・枝に蓄えた水が展葉を支えたことを報告しました。つまり貯蔵水の役割は「乾季のあいだ常に葉を養う」ではなく、葉を落として消費を抑えつつ、必要な時期に組織を動かす緩衝材に近いと考えられます。

年輪を数えにくい木の年齢

バオバブは幹が複数の茎からなる複雑な構造をとり、内部に空洞ができることもあるため、単純に年輪を数えて樹齢を決めにくい木です。Adrian Patrutらは微量の木材試料をAMS放射性炭素年代測定にかけ、千年を超える個体を報告しました。ただし幹の各部は同時に生じたとは限らず、「幹の一試料の年代」と「木全体の発芽年」は完全には同義ではありません。

2018年の同チームの論文は、調査した大型・老齢個体の多くが短期間に枯死または崩壊したと報告し、気候変動との関連可能性を述べました。しかし個体群全体の対照データが不足しており、気候変動を直接の原因として証明した研究ではありません。この限界は後の論評でも指摘されています。

よくある誤解

  • バオバブは1種:Adansonia属にはアフリカ大陸、マダガスカル、オーストラリアに分布する複数種があります。
  • 幹は空洞の貯水タンク:水は主に生きた柔組織に含まれ、空洞に湖のようにたまるという意味ではありません。
  • 太ければ必ず最古:幹の太さは種、環境、複数茎の融合にも左右され、樹齢の直接測定にはなりません。

基本情報

分類 アオイ科・バオバブ属
代表種 アフリカバオバブ Adansonia digitata
分布 アフリカ、マダガスカル、オーストラリア(種により異なる)
環境 季節的に乾燥するサバンナなど
葉 乾季に落葉する
利用 果実、葉、樹皮などが地域で利用される

さらにバオバブは人の暮らしとも深く結びつきます。果肉や葉は食用になり、樹皮の繊維も利用されます。ただし利用法は地域と種で異なり、すべてのバオバブに同じ用途を当てはめることはできません。

まとめ

バオバブの太い幹は水を多く含みますが、単なる容器ではありません。落葉による節水、組織の膨圧維持、雨季前の展葉などが連動した乾燥適応です。長寿についても、放射性炭素年代測定で千年級の組織が確認される一方、複雑な幹構造を踏まえた解釈が必要です。

参考資料

  • Chapotin, Saharah Moon; Razanameharizaka, Juvet H.; Holbrook, N. Michele (2006), “Water relations of baobab trees during the rainy season,” Plant, Cell & Environment 29, 1021–1032. DOI: 10.1111/j.1365-3040.2005.01456.x.
  • Chapotin, Saharah Moon; Razanameharizaka, Juvet H.; Holbrook, N. Michele (2006), “Baobab trees in Madagascar use stored water to flush new leaves…,” New Phytologist. DOI: 10.1111/j.1469-8137.2005.01618.x.
  • Patrut, Adrian; Woodborne, Stephan; Patrut, Roxana T.; Rakosy, Laszlo; Lowy, Daniel A.; Hall, Grant; von Reden, Karl F. (2018), “The demise of the largest and oldest African baobabs,” Nature Plants 4, 423–426. DOI: 10.1038/s41477-018-0170-5.

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