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ミツバチの群れは、1匹では難しい仕事を情報共有と集団行動で成し遂げます。代表例が、餌場の方角と距離を仲間へ知らせる「8の字ダンス(尻振りダンス)」と、ニホンミツバチがスズメバチを集団で包む「熱殺蜂球」です。ただし、ダンスは人間の地図のような完全な指示ではなく、蜂球も熱だけで敵を倒すとは限りません。研究から分かっている仕組みを順に見てみましょう。
8の字ダンスは何を伝えるのか
餌を見つけて巣へ戻った働きバチは、体を左右に振りながら直進し、左右交互に弧を描いて出発点へ戻ります。暗い巣内の垂直な巣板では、直進部が真上なら「太陽の方向」、真上から左へ30度傾けば「太陽から左へ30度」の方角を表します。太陽が移動するため、踊りの向きも時刻に応じて補正されます。
距離に対応するのは、主に直進しながら尻を振る時間です。長いほど遠い場所を示しますが、換算値は種や飛行時に見える景色によって変わるため、「1秒なら必ず何メートル」と一律にはいえません。餌場の収益性は、単純な「振動の強さ」だけでなく、踊る確率、尻振り走行の反復数やテンポなどに反映されます。仲間は踊りに追従し、花の匂いなどの手掛かりも組み合わせて探索します。
ニホンミツバチの熱殺蜂球
秋、オオスズメバチが幼虫や蛹を狙って巣を襲うことがあります。ニホンミツバチは侵入した1匹を捕らえると、500匹を超える働きバチが密集して球状に包み込みます。蜂球の内部は約47℃に達し、高温期が約20分続くという観察があります。蜂は羽で風を送るのではなく、胸部の飛翔筋を活動させて熱を作ります。
1995年の研究は、蜂球の高温がオオスズメバチには致死的で、ニホンミツバチは耐えられることを示しました。ただし両者の致死温度の差は3~5℃ほどとされ、蜂にも余裕の大きい方法ではありません。さらに後の研究では、蜂球内で二酸化炭素濃度も上昇し、同じ温度でも蜂球の外ではスズメバチが生存する場合が確認されました。したがって現在は、高温に加えて高濃度CO₂や湿度が組み合わさって作用すると考えるのが適切です。
よくある誤解と比較
- 「すべてのミツバチが同じ防御をする」わけではない:日本に導入されたセイヨウミツバチも敵を取り囲むことはありますが、オオスズメバチへの効果的な熱殺蜂球はニホンミツバチで特に発達した防御です。
- 「46~47℃なら熱だけで必ず倒せる」わけではない:敵の種類や蜂球の条件で結果は変わり、CO₂などの影響も無視できません。
- 「ダンスを見れば花の場所へ正確に直行できる」わけではない:踊りにはばらつきがあり、受け手は方角・距離に匂いや周囲の目印を加えて餌場を探します。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | ニホンミツバチ |
| 学名 | Apis cerana japonica(トウヨウミツバチの日本亜種) |
| 社会 | 女王蜂、働き蜂、雄蜂からなる多年生の群れ |
| 主な情報共有 | ダンス、匂い、振動など |
| 特徴的な防御 | スズメバチを包み、発熱・CO₂上昇などで弱らせる熱殺蜂球 |
まとめ
8の字ダンスは、太陽を基準にした方角と、飛行で得た視覚情報に基づく距離を仲間へ伝える仕組みです。一方の熱殺蜂球は、多数の働きバチが飛翔筋で発熱し、CO₂なども利用して巣を守る集団防御です。どちらも「1匹の特殊能力」ではなく、個々の行動が結び付いて群れ全体の力になる好例です。
参考資料
- Karl von Frisch, “Decoding the Language of the Bee” (Nobel Lecture, 1973)
- Schürch et al., “Honey bees communicate distance via non-linear waggle duration functions” (PeerJ, 2021)
- Ono et al., “Unusual thermal defence by a honeybee against mass attack by hornets” (Nature, 1995)
- Ugajin et al., “Detection of Neural Activity in the Brains of Japanese Honeybee Workers during the Formation of a ‘Hot Defensive Bee Ball’” (PLOS ONE, 2012)
- Sugahara & Sakamoto, “Heat and carbon dioxide generated by honeybees jointly act to kill hornets” (Naturwissenschaften, 2009)

