
ヒイラギの葉はすべて同じ形ではありません。若い木や勢いのある枝では、葉の縁に鋭い歯が目立ちますが、老木や成熟した枝では縁の滑らかな葉が増えます。同じ植物が成長段階や枝の状態に応じて異なる形の葉を作る現象は「異形葉」と呼ばれます。重要なのは、すでに開いた葉から、とげだけが消えて丸くなるのではないことです。新しく作られる葉の形が変わります。
葉が変わる流れ
葉の形は、枝先の芽にある葉原基が成長する過程で決まります。ヒイラギでは、幼若な段階の枝ほど葉縁に数対の鋭い歯を作りやすく、成熟相へ進むと全縁、つまり切れ込みのない葉を作りやすくなります。一本の木でも枝ごとに発達状態が異なるため、とげのある葉と滑らかな葉が同時に見つかることがあります。
この変化を季節ごとの紅葉と混同してはいけません。ヒイラギは常緑樹で、古い葉は入れ替わりますが、葉形の違いは主に個体・枝の発達段階に関わる形態変化です。剪定後に勢いよく伸びる枝などで、とげの目立つ葉が再び現れる場合もあります。
とげは食害を防ぐため?
低い位置のとげ状の葉は、大型の草食動物に食べられにくくする物理防御として説明されることがあります。この考え方はもっともらしく、セイヨウヒイラギやアカシア類では、採食圧と葉・枝の防御形態を結ぶ研究があります。しかし、それらはヒイラギとは別種です。ヒイラギ自身について、動物の採食を操作して葉形の変化と生存率まで直接確かめた一次研究は、今回確認できた範囲では限定的でした。
したがって「動物の口が届かなくなったと判断して、とげをなくす」と擬人的に説明するのは避けるべきです。観察されるのは若木・若い枝と成熟した枝の葉形差であり、食害防御はその形が進化・維持された理由の有力な説明です。一方、個々の芽が高さを測って意識的に形を選ぶわけではありません。
クリスマスホーリーとは別の植物
日本のヒイラギはモクセイ科モクセイ属で、秋から初冬に香りのある白い花を咲かせます。西洋でクリスマス飾りに使われるセイヨウヒイラギはモチノキ科モチノキ属です。葉が似るため混同されますが、ヒイラギの葉は対生、セイヨウヒイラギは互生です。似たとげ葉は、近縁だからではなく、似た防御上の課題に対する収斂の例として説明されます。
基本情報
| 和名 | ヒイラギ |
|---|---|
| 学名 | Osmanthus heterophyllus |
| 分類 | モクセイ科モクセイ属 |
| 性質 | 常緑の低木~小高木 |
| 葉 | 対生。全縁または3~4対ほどのとげ状鋸歯 |
| 花 | 秋~初冬の白い芳香花 |
| 葉形変化 | 若い枝でとげが多く、成熟した枝で滑らかな葉が増える傾向 |
まとめ
ヒイラギの「とげがなくなる」とは、一枚の葉が後から変形することではなく、木や枝の発達に伴って、新しく展開する葉の形が変わる現象です。とげは食害防御に役立つと考えられますが、別種で得られた実験結果とヒイラギでの観察を同一視はできません。若木、老木、剪定後の枝を見比べると、一本の木の中に成長履歴が記録されていることが分かります。


